説明書の多言語翻訳|テクニカルライティング

技術翻訳 エクセレット株式会社

技術翻訳のトラブル事例に学ぶ:「品質」と「契約」の重要性

はじめに:翻訳トラブルは他人事ではありません
技術翻訳は、製品の正しい理解や安全な使用を支える非常に重要な業務です。
しかし、翻訳会社を選定する際に十分な確認を行わなかったことで、重大なトラブルに発展するケースも少なくありません。

本記事では、実際にあった訴訟事例をもとに、翻訳業務を発注する企業として「何に気をつけるべきか」、そして「同じトラブルを回避するためにできること」をご紹介します。

第1章:信頼して発注した翻訳会社、しかし納品物に多数の問題が…
ある企業(以下、依頼企業)は、専門性の高い製品カタログを英語から日本語へ翻訳するため、ある翻訳会社へ業務を依頼しました。

当初、この翻訳会社はウェブサイトで「技術翻訳に強い」「高品質なサービスを提供」「お客様の立場に立った対応」と大きく宣伝していたため、依頼企業も安心して発注しました。

しかし、納品された翻訳には、多数の誤訳や技術的に不適切な表現が含まれており、内容の正確性・専門性が著しく欠けていることが明らかになりました。

第2章:修正依頼も受け入れられず、やむなく再発注
依頼企業はすぐに修正を依頼し、さらに翻訳者の交代も要請しましたが、翻訳会社側はこれに応じませんでした。
再修正も不十分で、納期は大幅に遅れ、翻訳の品質も改善されないままでした。

結果的に、依頼企業は別の翻訳会社へ再度依頼せざるを得なくなり、翻訳費用が二重に発生するという大きな損失を被ることとなりました。

第3章:訴訟へ、そして専門性の壁
依頼企業は、支払済みの半額を除き、残金の支払いを拒否。
翻訳会社側は「契約通りの納品を行った」と主張し、訴訟に発展しました。

第1審では裁判所が契約不適合を否定し、依頼企業の主張は退けられました。
これを不服とし、控訴審では専門機関の翻訳品質評価を添えて再度主張しました。

その意見書には、「納品物は多数の誤訳を含み、契約水準を満たしていない」との明確な指摘が記されていましたが、裁判所は「一部誤訳はあるが修正可能」と判断し、翻訳会社側の主張を全面的に認める結果となりました。

こうして依頼企業は、品質に不満のある翻訳に対し、費用全額を支払うことを余儀なくされました。

第4章:翻訳業務発注時に気をつけたい3つのポイント
この事例から得られる教訓は明確です。
翻訳業務の外部委託には、次の3つの注意点が不可欠です。

1. 翻訳会社の実績や専門性を事前に確認する
ウェブサイトや営業資料に書かれた「強み」だけではなく、具体的な実績や担当翻訳者の専門背景などを事前に確認しましょう。
試し翻訳を1ページ程度依頼する方法も検討しましょう。

2. 品質トラブル時の対応を契約で明記する
「再修正の回数制限」「不具合時の返金対応」など、トラブル時の責任分担をあらかじめ契約書に盛り込むことが重要です。

3. 中間納品や段階的レビュー体制を整える
最終納品まで任せきりにせず、途中チェックポイントを設けることで、早期に品質の問題を発見できます。

まとめ:翻訳は「価格」よりも「品質と信頼」
翻訳業務は一見シンプルに見えて、実は高い専門性とマネジメントが求められます。
コストだけで判断するのではなく、信頼できるパートナー選びとリスクを見越した契約設計が、トラブル回避への第一歩です。

同様の被害を防ぐために、本事例が少しでも参考になれば幸いです。

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担当者名:川崎

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